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<第2回から続く>
作画カットといえば、3DCGもありましたよね?
うえだ:まず、3DCGの場合は、内容を一番わかっていなきゃいけないのが進行さんだと思うんですよ。「これは3DだからOKで、これは作画だから後から回さないと」という連携が上手く取れるというのは、すごく大事なことです。どれを3Dにするかというのは、絵コンテで最初に選ぶんだけれど、当然そこで3Dとの作画打ち合わせはやります。あと、キャラクターの作画と3Dを合わせなきゃいけないカットは、レイアウトを切って分ける形になるんですけど……作業が複雑なんですよね。レイアウト上げて、それに合わせて3D作ってもらって、3Dのラフを基に2Dの作画を仕上げてもらって。で、3Dのパートが上がってきたあと、撮影で組み合わせるんですけど、その段階で齟齬が生じる場合もあります。その辺をあとどうするかですね。
松田:卵が先か、鶏が先か、だよね。3Dでその通りにうまく合うかというと、そうでもない。3Dがバッチリ上がってきても、キャラクターとのパースがなかなか合わなかったりもするし。スケジュールだって、3Dを上げてそれに沿ってアニメーション作りましょうという時に、演出さんが「もうちょっとこう……」って言ったら、それはもうリテイクなわけですよ。再現したいフィルムは演出さんの頭にしかないわけで、そこが大変ですね。とはいっても、やっぱり3Dなくして「シムーン」はないわけであって……。
うえだ:それに関していえば、撮影監督の川口さんが頑張ってくれていたから。愚痴をこぼしながらも実は準備してくれていて、そういう機転が利くところがね。
松田:川口はイイよ~! イイ意味で、ヤな奴だからね!
うえだ:「いつもできると思うなよ」というところはあるとは思うんだけどね。そういう意味で、撮影でクオリティを上げていたのはすごいよね。もちろん、2Dオンリーのカットでも、頑張ってくれたし。オレの方で「時間ないから、これはこのくらいの感じでイイよ」というものにも、「いや、これはどうしても入射光を入れたいんです。やっていいですか?」というようなことがあったり。そこはやっぱり、助かっているなぁ……。
おふたりは今、演出という仕事の内容で、ディーンと他の制作会社とで違いはありますか?
孫:んー……やっている事は、同じですよね。
うえだ:ギャラは……だけどー! やっている事は一緒でー……!!(大笑)
(一同・爆笑)
うえだ:冗談は置いておいて、スタジオディーンに関して、オレは松田が入った頃からしか知らないんだけど、とにかくまずは“勢い”がある。良い作品に仕上げようっていう勢いをすごく感じる。次から次に作っていて、制作に活気があるよね。仕事が常に回っていないと、みんなはついてこないしね。そして、それをちゃんとクオリティを上げて納品しているっていう実績があるし。
孫:それと、いい形で仕事が仕上がっているのは、松木さんみたいな制作の人が、ハッパかけているという部分が大きいと思いますよ!
松木あい(以下、松木):ありがとうございます。
松田:漢気だよ、漢気。“漢”と書いて“松木”と読む、みたいな(笑)。
松木:私、孫さんにどうしても「シムーン」をやってもらいたかったんですけど、それは、演出で女性がひとりもいなかったからなんですよね。それで、孫さんが私の班でない仕事をやってらっしゃる時から、いつかタイミングがあったら一緒に仕事をしてみたいって思っていたんです。私自身、女性の演出さんとお仕事をやらせてもらうことってほとんどなくて、初めてみたいなものだったんですが、「シムーン」という作品には、女性としての感性が必要なんじゃないかなと思っていましたから……。
なるほど。おふたりで、“パル”だったわけですね!
孫:(笑)。実際、自分自身が女子高を出ているので、すごく似ているんですよ。
松木:仕事のオファーを持っていった時、その話を一番初めに聞いて、これは絶対にやってもらいたいって思いました!
孫:「シムーン」のキャラクターみたいな子たちは、全員女子高にいるんですよ!
松田:いるだろ! そうだろ!!
孫:ちょっとアレンジしただけであって、もう、全く同じでした!
うえだ:……今、ふと思ったんだけど、孫はどのキャラだったの?
松田:あ、面白いなぁ……!
孫:んー……へこむところは、パライエッタかなぁ……?
(一同・頷く)
うえだ:アーエルじゃないんだ。
孫:違います、違います!
松田:やっていることは、アーエルじゃん!
孫:だから、パライエッタなんですよ。パライエッタも、前に出てくるけど、裏では……!
松田:「今まで出てきた奴より、あなたの判断、鈍るのかい?」とか言われちゃう、みたいな?
孫:いや、その台詞、ゼンゼン違いますから(笑)。
(一同・笑)
松田:でも、言っていることはそうだろ?
孫:まぁ、内容は間違っていませんけど(笑)。
松田:もう、孫さん、小っちゃい!
孫:その通り! 松田さんも小っちゃい!
松田:○×○×はそんなに小っちゃくないぞ!!
(一同・爆笑)
うえだ:ただのセクハラじゃねーか!(笑)
孫:(笑)……だけど、良くできていますよ。ホントに周りにいたってキャラばっかりでしたから。
松田:それは、西村さんに言ってあげて。西村さんと岡田(麿里)さんの妄想のたまものだから。
孫:妄想が、ああなるんですか……! すごい!
松田:シナリオ会議は、面白かったよー! 若手脚本家の岡田麿里が、大ベテランの西村純二監督に「ないから!」って! そう言われて西村さんが「あ、そうっすか……」と……(笑)。
(一同・笑)
松田:(西村)「オレ、こう思うんだけどさー! この時のパライエッタってー……」、(岡田)「ないっすから!」(笑)
(一同・爆笑)
うえださんはゲームのオープニングの演出をやられましたけど、それについてのお話をお願いします。
うえだ:テレビシリーズの最終回のオンエアを見てから作業を始めたので、同窓会っぽい感覚がありました。うわー、ちょっとなんか懐かしい……って。キャラクターに対する理解度も、自分の中ではある程度熟している部分があったから、演出的にはやりやすかったかな。あと、撮影さんとのコミュニケーションも思いどおりにできたので。細かく指定を書いてどうこうというのではなくて、撮影さんと「現物合わせでやろうよ」といった感じでね。それはもう、さすがに「シムーン」全26話を作ってきたスタッフだからこそできるコミュニケーションですよね。アレを1から作ろうと思ったら大変だったと思うけど。シリーズあってこそのノリなんじゃないかなぁ……。
バラの散り方とか、アイキャッチのキャラが上手く動いていたのが印象的だったんですが。
うえだ:それは絵コンテを描かれた西村監督の上手さです。原画さんが新人の方が多く、理解の度合いが足りない面もあったりもしましたが、そこはこちらでいろいろと絵を入れて細かい指示を加えたりして。そんな苦労も含めて楽しかったですね。
松田:何だかんだ言って、激烈なオープニングですよね! 本来だったら本編が忙しい西村監督に絵コンテなんか描いてもらえるわけもないのに、「『シムーン』の世界観を一番わかっているのはオレだから」とやっていただいて、それをうえださんが演出してくれて、ウチの森本(浩文)が作画監督をやるという! もう、激熱! ゲームのオープニングは、ディーンとしても結構気合い入れたかなー、って思いますね。
うえだ:演出家として一番楽しい仕事は、動きを足す仕事なんだよね。動きを抜く仕事じゃなくて。だから、そういう意味で、自分がアニメーター的な気分で関われたのは、面白かったですね。いくつか気に入ったカットがあるんですよ。パライエッタのグラスのシーンと、すぐフェードアウトしちゃうんですけど、モリナスがシムーンの模型をかざすシーン。そのあたりは楽しんで足した部分ですね。スケジュールはなかったけど、なんか良くできていくのは、シムーン・クオリティですね!(苦笑)
松木:スケジュールは、今回はホントに、ご迷惑おかけしました!
うえだ:アイキャッチを動かすっていうのは、ホント、いいアイデアだったと思う。みんな喜ぶんじゃないかなぁ……。結構、撮影の人が嫌がる処理をやっているんだよね。それを無理やりやらせちゃった部分もあったんだけど、今回は喜んでやってくれましたね。「ダイジョブ、ダイジョブ!」みたいな。
松田:今回、背景をお願いした武井さんという方がおられるんですが、その方も非常に良い背景を上げていただいて、ゲームオリジナルの資料を元に非常にハイクオリティで、テレビシリーズの「シムーン」をイイ感じで再現してくれたし。ゲームで背景を発注して、あそこまで元のシリーズをリスペクトして、かつゲームオリジナルの部分もコラボレートしてくれるというのは、なかなかないと思う。最低限のスケジュールなのに、最大限のことをしてくれましたね。
うえだ:背景さんは、ホント、良かったよね。
松田:背景はCGなんだけど、CGで今の「シムーン」の世界を再現してくれて、違和感なく仕上げていただけたことが、非常に素晴らしい。そういう意味ではホントに森本くんであったり、うえださんであったり、背景の武井さんであったりの三位一体。そこにわがままひとつ言わずに付き合ってくれた、撮影であったり色彩設計であったりね。……色彩設計の持田くんなんて、全然ゲーム知らないんだから! もちろん、本編の色は塗っているし、サイルサンドラもアーシュラも色指定をしていただいたわけなんだけれど、急ぎのゲームの仕事なのに「こういうキャラだからこういう色」で終わらせないで、チャンとシナリオ読んでいるんだよ。それがスゲェ、奴は! あと、ゲームの本編も全部、ディーンでやっている。ムービーもウチでやっている。普通だったら他の会社さんにヘルプを頼むと思う。ここまでやっているのも、珍しいよね!
孫さん、メインキャラの中では誰が一番、感情移入できましたか?
孫:パライエッタですね!
一同:え~~~~!
孫:最初は少女マンガのキャラクターなんだなと思っていたんですけど、やってみたら、意外と人間ぽいじゃん、みたいな。悩むところとか。
松田:オスカル(「ベルサイユのばら」)だよね。
孫:そうですよねー。
松田:あのね、岡田さんとのコンセンサスは、使えないオスカルだった!
孫:確かに(笑)。……要するに、今までネヴィリルがナンバーワンだったのが、パルが死んじゃって篭っちゃって、その時に、仕切らなきゃいけないと頑張っていたんだけど、駄目だった。「あ~~~……私、もう無力かも~~~……」みたいなところが、とても好きだったんで。やっぱり、悩まないと人間じゃないですよね。
うえだ:そういう意味で、最終回のパライエッタの立ち位置は納得できるんだよね。
孫:ええ。納得できましたね!