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蔵出シムーン・シヴュラ 野崎圭一(音楽プロデューサー/ビクター・エンタテインメント)第3回第2回から続く>

続いて、ドラマCD「なぜなんだシムーン株式会社」についてですが、世界観のがっちりとした本編に対して、このドラマCDの企画をされた意図は?。

それはもうあからさまに、本編をすごく一生懸命作った分だけ、すごく一生懸命壊しちゃおうかなと。CDのたすきコピーにも書いてありますけど「CDドラマだったら何でもできる!!」もうこれしかありません(笑)。

何でもできるんだけど、最近作っているCDドラマって、他のメーカーの物も含めて、逸脱感が薄いというか……。CDドラマだからできることがあるだろうと、すぐお風呂に入れるとかじゃなくて(笑)。……すみません、このCDにも入ってるんですけど(笑)。今回のような不思議なものができるというのは、CDドラマというアイテムだからこそだと思うんですよ。ラジオドラマじゃないから、放送を気にしなくていいし、何でもあり!

音で作った“コミケに出せる物”というか……粗悪でもなく、馬鹿にもしてないのだけど、リスペクトはしているんだけど、全くぶっ壊しちゃったという。まず、株式会社なわけがないし、死んだキャラは生き返っちゃうし(笑)。そんないろんなことをも織り交ぜて、ストーリーの流れを作ってみました。パッケージもサントラCDはすごくきれいなんだけど(笑)。ドラマCDのジャケットのイラストは、あえてまったく違うようにと指定しました。ストーリーは、赤尾でこさんと、松田さんと僕の3人で、何回かミーティングしました。これがミーティングをするたびに話が壊れていく……(笑)。昔、ドリフを観ていたときの、お馬鹿なノリみたいなものを集約したというか。いや、それよりイッちゃっているかも(笑)。ここまで壊れた物を作るのは初めてですねぇ……。近いのは、「逮○しちゃう☆」のショートドラマものでやりましたけど、あの時は「これ以上やってはいかんなぁ」という自制心が働いたんですけど……今回に関してはありませんでした!  振り切っていっちゃいました!

それでは、聴かせどころは?

やっぱりね! トラック4の竹下通りの2人のお買い物が最高でしたね!! 金持ち&貧乏という、お互いの視線が全く絡み合わないところが良かった。キャラクターの壊れ方は……みんなすごかったですね。特に最後のぶっちゃけトークを聞いていても、よくぞ皆さん、ここまでノっていただけたというか……。能登(麻美子)さんもよくやるなぁ、と(笑)。

このCDに関しては、野崎さんご自身でダビングにも参加されたということですが。

アフレコ演出は辻谷さんにお任せしましたが、逆に壊す責任上、ダビングまでやってもらうのは辻谷さんには申し訳ないと思ったんですよ。ましてや、アニメ本編のダビングも残っていらっしゃるのに。いよいよクライマックスで、盛り上げて終わっていかなきゃいけないのに、こんな逸脱した物を同時進行でやっていただくなんて、とてもとても……。普通のプロデューサー的発想だと、頼めばやってくれるんだろうけど、「ケツは私が拭きますよ」という思いもありました。だから、選曲も「ここにはこういう曲をいれていこう」とか、やりました。音楽プロデューサーだからできる選曲みたいなものを狙ってみたというか(笑)。

効果の山田稔さんとは、つきあいは長いのですか?

そうですね。作品も一緒にやることが多いですし、歳も近いので。とにかく2人で盛り上がって作っていましたね。ゲラゲラ笑いながら。やっぱり、笑えてなんぼだと思ったもので。

特に「シムーン」本編をずっと観ていた人たちに笑ってもらいたい。このドラマCDだけを買って聴いても、面白い物だと思うのですが、内容がわかっていればわかっているほど面白いように仕掛けを入れています。 

シナリオのパロディさ加減もそうだし、それぞれの台詞は、それぞれどこか本編の中からセレクトしていたりしています。最後のシーンで「私はもう会社を解散させます」と語っちゃっているところも、本編で語っている台詞をずーっと違う形で書いていって、それに「いいの?」って、チャチャを入れていく形だったりとか。本編を楽しんだ方だったら、さらに楽しめる仕掛けになってるはずです。音楽の使い方も含めて。さらに、本編には絶対入れられないような効果音も、たっぷり入っています。それは山田さんのお力だと思うし。まぁ、風呂には入ってるんですけど、それ以外のところでも笑えるものとかHな気分のものも含めて、満載できたかなと思います。多分、ユーザーがわからないところといえば、「ビクタースタジオ、高いのよ」ってところがわからないと思うんですが……ウチのスタジオは料金高いんでね(笑)。「高いから使えないのよ!」そこで山田さんが、レジの音をチャリーン♪  と効果音を入れたりとか(笑)。そういう、ユーザーには本意は伝わらないけど、一般的な面白さで音的にも説明したりしています。だから、場所の設定も最初、五反田にしようか六本木にしようか、いろんなことを考えつつ、いろいろ悩んだんですよ。あとはやっぱり、玉川さんのご協力もあって☆本○実も覆面で出てくるわけですし(笑)。これをわかってくれる人がいたら、嬉しいですけどね……!

それでは、「シムーン」を振り返ってのご感想をお願いします。

面白かったですよ。でも、もっと世の中で、この作品の話題がもうちょっと幅広い年齢層に広がってほしかったなという思いもあります。

ストイックな部分もあったし、こっそり観た人も多かったと思うのですが。あと、声優さんも含めて業界の中で観ている方も多かったので、もうちょっと多くの人たちの間で広がればと。ちょっと反省もありますけど。

ただ、いわゆる単なる萌え系ではなくて、初めて“女の子ばっかり”という作品をやれたことは面白かったです。

最後に、「蔵出シムーン」を読んで下さっているファンに、メッセージを。

思い出としては、追加で収録した曲の中に「田園」という曲があるんですけど、このメロディは西村さんも辻谷さんも非常に気に入っていただけて、劇中では歌われたりとかしましたね。それはもう監督たちのアイデアなんですが、さらに、オルゴールというか風車のメロディになっているんですよ。映像や音響のクリエイターの方から新たな音楽イメージを引っ張り出せたというのは、嬉しいですよね。背景音楽なんでついてればいい、というわけじゃなくて、それが作品全体のアイデアの活性化に繋げられたっていうのは、良かったです。ある距離感がありつつも、すごく一体感のあるチームでやっていた感じがしています。そんな作品に参加できたことは、嬉しかったです。

またやりましょう! 仮に「シムーン」ができなくても、このチームで何かやりたいですね。

ありがとうございました。

野崎さんの回は今回で終了です。
次回からは、ノベライズを執筆した岡崎純子さんが登場です!
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