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監督&ライター編 蔵出シムーン・ファイナル 監督:西村純二(ライター名:西村ジュンジ) シナリオライター:岡田磨里 第4回第3回から続く>

それでは12話と最終話以外で、自分で書いて印象的だったシナリオはありますか?

岡田:話数ではないのですが、パライエッタのエピソードには思い入れがあります。シヴュラたちはそれぞれ魅力的なんですが、パライエッタには少しひっかかりを感じていたんです。この歳で、こんなに人格者でいいのかなって。完成された発言ができるのは、ある意味で人のことを考えない、欠落した部分があるからじゃないかと思って……それで、ちょっと迷わせてしまいました(笑)。彼女には悪いことをしましたが、すべては愛ゆえということで。話数でいえば21話、ドミヌーラとリモネの話は書いてて面白かった!  あの話数は、スケジュールがないところが逆にエネルギーに変わったと思います。引き戻すことはできない、考えて選択する時間もなく、前に進むしかしかできない……それはまさに、シムーン・シヴュラですよね(笑)。「これでいいんだろうか?」「いや、これしかない!」という気持ちの揺れと決断とが、そのままフィルムに現れてるなと。音楽の入れ方とかも最高でしたし。あと、監督との連名で書いた話数が2つあって。監督が最初に書いたシナリオに、こちらで手を入れさせてもらったんですけれど……。

西村:ああ、あの夜這いのやつね。

岡田:そうそう! 他の人の書いたシナリオを完成させるという作業は、なかなか慣れないし苦手なんですが、今回はメチャクチャ楽しかった! あの2つの話数は、結局シナリオが完成しなかったのでこっちに回ってきたんですけど……手をいれようと読みなおしたときに、監督がなにを目指したかったのかがすごくわかりました。前にも言いましたが、監督のシナリオは気持ちがノッてるところと萎えてるところの差がわかりやすく出るんです。夜這いの話も、監督の思い入れがあるところだけがキラキラ輝いてた(笑)。「そこを引き立てよう!」「ココをこうしたらもっと熱くなるんじゃないか?」と。なので、あれは連名になってますけど、監督のシナリオがなかったらあり得なかったです。2人で書くという、共同作業の楽しさを知った話数ですね。監督は、自分で自分のシナリオの絵コンテを「描きづらい!」「コンテ切りづらい!」「何だよこれ!」とかボヤいてましたけど(笑)。

西村:(苦笑)……うん、絵コンテを担当した人間の立場になるとね、そういう感想はありますよね(笑)。シナリオはライターとして書いていて、コンテマンのことを考えて書いてないんですよ。

岡田:気付いたら、自分のためにも書いてなかったという……(笑)。でも、苦労されただけあって、監督がシナリオ、コンテとも担当された話数はどれも良かったです。オリジナルだから余計にわかったことなんですが、監督は独自の空気を持ってるんですよね。ちょっと乾いてて、でも粘膜にはりつく……というか。そして最後まで、その空気が維持できてるんですよね。スケジュールにバラつきがあっても、それを維持できてるのは、ホントすごいです。私は別の仕事も同時にやってましたけど、全てがシナリオ作業だったから。西村さんはライターと監督を一緒にやってるわけで、私なんかより全然きつかったと思うし。歳も歳だし(笑)。大変だったろうなぁと。

西村:……大変だったんでしょうね……。終わってから病気で1ヶ月ぐらい、倒れちゃいましたもんね……(苦笑)。

岡田:(苦笑)

西村:みんなから、「終わるまで倒れないでくださいね」と言われ、多分、自分もそう思ってたんでしょうね。終わってから、西田さんとのコメンタリー収録大阪に行って、東京に戻って来てからおかしくなって……。「収録取の後、どっかヘンなトコ行ったんだろう」と言われて……「行ってないんだよぉ~!」と言っても信じてもらえないくらい、感染症っぽい顔してましたから(笑)。いや、ホント、大変だったんでしょう。

岡田:「監督ががんばってるから、がんばろう!」というのは、みんなにあったと思います。

監督は、ライターとして25話以外で印象的だったシナリオは?

西村:……何を言ってるんですか! 書いた物はひとつひとつ、血と汗と汁の結晶!(笑)。あれですよ。やはり9話です。繋ぎの話ですけど、がんばって書きました!  今までは、基本的に原作物をやってきて、ライターさんが書いたシナリオをチェックする立場で、「ああして」「こうして」と頼んだりしてきていて、一から作るっていうことを、本当に何もないところに何かを作った気分になれました。全責任はお前にある、みたいな。

岡田:「マ王」の時とゼンゼン違うんですよ。あの頃は「ああ、大人って大変なんだなぁ」って感じてました(笑)。様々な周辺事情を考えて、手堅く仕事をこなしてるというか……あ、イイ意味でですよもちろん(笑)。

西村:(笑)。いやいや、基本的に融通だけきかせやがって、と思っていたと思いますよ。

岡田:(笑)。大人の仕事を、誠実にキチンとする人だなと思っていたんですけど。でも「シムーン」では、メチャクチャ子どもで! 「お前はシヴュラかよ!」みたいな(笑)。かなりはっちゃけた“少女”でしたね、監督は。女性スタッフとも、「一番の乙女は監督だよね」って話をしていて。とくに、書くものがそうなんですよ。うん、少女というより乙女(笑)。

西村:大人気の原作小説が存在する「マ王」と、完全オリジナル「シムーン」。やってることが見た目には違ったかもしれないし、実際立場的にも、違いはあったと思いますが、実は、底の底では同じ気持ちでやってるんです。なんていうか、両方を見た人が、ああこれもしかして……同じ監督さんがやってるのかも?  って思ってもらえると最高なんですが。両方でテレビシリーズの監督をやらせてもらって、ほんと人生に悔いなしです。

岡田:もちろん、「マ王」の完成したフィルムには、西村節がちゃんと漂ってると思います。ただ、あの頃の西村さんは、ベテラン監督というか大監督だったんです。全てを掌握し、駒を配置し……司令官みたいな!(笑)  それが「シムーン」の場合は、監督は自身が特攻隊だったんですよ。方面軍司令官から、いきなり第一線の二等兵に変わったような感じです。

西村:確かに、そんな感じでしたね(苦笑)。でも司令官も二等兵も、両方大変なんですからね!(笑)

岡田:承知しております!(笑)……でも、「マ王」のときに監督から「そんなんじゃ、大人として駄目だ」って言われたから、大人としての仕事の仕方を覚え始めてきたのに。それを「シムーン」でぶち壊されて……。

(一同・爆笑)

岡田:「どっちなんだよ!」みたいな(笑)。大人の言うことは、話半分に聞けということを学びました。

(一同・苦笑)

それでは、いよいよ最後になりましたが「シムーン」を振り返って、ファンの皆様へのメッセージを。

岡田:そうですね。仕事に入る前から、「シムーン」の世界に魅入られていたので“自分が壊さないように……”と思うと、逆にめちゃくちゃにしちゃうんじゃないかと思って。自分なりに、アーエルたちを少女の季節から一歩、マイナスではなくプラスに踏み出させてあげられたらなぁと思いつつ……。私が関わってからも、「シムーン」が変わらず皆さんに愛していただけたなら、本当に嬉しいです。私にとって全ての運命と偶然が巡り合った、忘れられない作品ですので……DVD、よろしくお願いします!(笑)

(一同・爆笑)

では監督、お願いします。

西村:ライターとしては……こんな素晴らしい作品に関われてとっても幸せでした……みたいな?(笑)

(一同・ブーイング)

西村:いやホント、ライターとしては30分番組を初めて書いて、結局は8本ぐらい書いて……そんな予定じゃなかったのに(苦笑)……夢幻(ゆめまぼろし)のようでした。正直な感じ、最初はまぁ「大変だー!」って話だったんですけど、後半はそれこそ、南総里見八犬伝の作者の台詞じゃありませんが、“全部終わって、まるで夢幻”みたいな気分は、ありましたね。

岡田:何か、熱に浮かされてた感じがありましたね……。

西村:ホントにそういう感じで、みんなもそうだったでしょうし、私としてもそうでした。そして、監督として、ホントに企画の頭から、最終的なフィルムのラストシーンのイメージが違ったものになったのは、さすがに初めてでした。企画の最初のころは「え~、何か、女の子ばっかり、いっぱい出てくるだけなんて、嫌だなぁ……」みたいなところから始まっていたんですよ、正直なところ。で、「どうしてもやるんスか、これ?」みたいな。そういうところから始まったのに、今になってみれば「この作品は、一生忘れられないだろうなぁ……」みたいなところまできちゃう。やっぱり、作品というのはそういうもんだ、と。誰が関わって何をしたかで全てが変わり、そして決まる!  ということを、ホント実感しました。「だいたいこんな感じかな?」とやり始めて、だいたいこんな感じで終わる作品もあるだろうけど、「シムーン」は対極でしたね。……でも、ウチの嫁さんがシリーズを通しで観てるんだけど、「まだ、突き抜け方が足りない!」とか言っていて……(苦笑)。

(一同・爆笑)

西村:「もうちょっと、ちゃんとウケ線狙わなきゃ駄目じゃん!」みたいなことを言われていて、それはそれでけっこう楽しいっスよ!(笑) 西田さんとか岡田さんとか、あと、アーエルとかネヴィリルとか、向こうがどう思っているかは別にして、関わってくれたスタッフのおかげで、こっちの目線が変わっちゃったんだよね、やっぱり。西田さんには、「共にあのスケジュールを戦った戦友じゃないっすか!」とか言われたときは、僕は泣きそうになりましたよ……。ただ、作品的には、やっぱり反省点もあるにはあって、正直、もう少し最初の取っ掛かりはよくすべきだよね!  そう思う!(笑) 最初から続けて観てくれた人、ありがとう! というのは、ありますね……。だから、第2シーズンやらせてくれれば、さらにおもしろくできますよ!  やりますよ!!

岡田:そうですね!

ありがとうございました!

 

「シムーン」を作ってきたメインスタッフたちの、今だから話せる制作秘話を連載し続けてきた「蔵出シムーン」は、今回で終了です。

蔵出シムーンに登場して頂いた蔵出シムーン・シヴュラたちの皆様、インタビューアーの鈴木様、ご協力ありがとうございました! このサイトを企画・運営するスタッフ全員より、心からの感謝を申し上げます。

そして放送が終了した後も「シムーン」を力強く応援し続けてきてくださった皆様、継続的にこのサイトへ足を運んでくださった皆様こそが、この作品を支え推進してくれたヘリカル・モートリス、原動力であったことは間違いありません。

ありがとう、という言葉だけでは伝えきれないほど、感謝しています。でも、ありがとうっていう言葉しかないのですね。

「シムーン」の世界を愛し、少女たちを見守り続けてくれてありがとう。

「蔵出シムーン」は今週で終わってしまいますが、ちょっと間を置いて4月からは、いよいよ発売となるPS2のゲーム「シムーン  異薔薇戦争」をフィーチャーした連載が始まります。随時更新されていく予定ですので、これからも是非目を離さないようにしてくださいね!

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